
2026年9月、Anthropic社は自社のAIモデル「Claude」が悪用されたサイバー脅威事例をまとめた最新の脅威インテリジェンスレポートを公表しました。
本レポートでは、生物兵器関連情報や影響力工作(世論誘導)など多様な悪用リスクが包括的に扱われていますが、その中で最も実体的なサイバー防衛上の脅威として注目を集めているのが、ロシア政府支援の脅威アクター(Midnight Blizzard / APT29)によるサイバー諜報活動へのClaudeの悪用です。
攻撃者はClaudeを単なる質問ツールとしてではなく、「攻撃の省力化」や「検知回避プログラミングの自動化エンジン」として実戦的にパイプラインへ組み込んでいました。
標的はウクライナおよび欧州の政府機関、外交機関、ならびにドローン製造をはじめとする軍事サプライチェーン企業に及んでいます。
レポートでは中国やフランス語圏の悪用も報告されていますが、中でも高度な軍事・サイバー諜報活動に至っていたのが本件です。
特徴的な部分をみてみましょう。
- 「検知回避のためのコード書き換え」をAIで自動試行
従来のハッカーはセキュリティ製品(EDRやAV)にマルウェアが検知された場合、手動でコードを難読化・改変していました。
今回のキャンペーンでは、セキュリティソフトによる検知ルールをクリアできるよう、攻撃者のローカル環境(自動化スクリプト)とClaudeのAPIを連携させ、EDR等に検知されるたびにClaudeへコードの難読化や再構築を要求するワークフローを構築していました。
これにより、検知された直後に新規亜種を作成・デプロイするサイクルが劇的に高速化されました。 - 軍事ドローンのリバースエンジニアリングと設計解析
攻撃者はウクライナ軍に供給されているドローン企業等のネットワークへ侵入した後、奪取したファームウェアや画像認識システム(SDK)の逆コンパイル結果やアセンブリコードをClaudeに読み込ませていました。
AIにコード解析を行わせることで、ドローンのアーキテクチャや部品構成表(BOM)、自動追尾ロジックなどを短時間で解読・復元させていたことが確認されています。 - インフラ侵入(ホテルWi-Fi等)とソーシャルエンジニアリングの効率化
標的となる要人が宿泊するホテルのWi-Fiネットワーク侵入手順や、フィッシング攻撃で用いる文面の最適化など、サイバー作戦の各フェーズでAIが補助的に活用されていました。
専門的なスクリプト作成の労力をAIに肩代わりさせることで、攻撃コストの大幅な削減を図っています。 - Anthropic側による検出・アカウント阻止
Anthropic社のThreat Intelligenceチームは、パターン分析と異常検知メカニズムによりこれらの攻撃用アカウント群を特定し、無効化措置(アカウント凍結およびモデルアクセス遮断)を実行しました。
同社は生成AI製品が国家レベルの諜報作戦に組み込まれるリスクに対し、セキュリティ監視の強化を継続する方針を示しています。
本件は、高度な脅威アクター(APT)が大規模言語モデル(LLM)を「攻撃の全行程を省力化・自動化するインフラ」として本格採用している実態を浮き彫りにしました。
- 攻撃手法の変容
「悪性コードを一から書かせる」レベルを超え、「既存コードの検知回避改変」や「複雑なバイナリデータの解析(リバースエンジニアリング)」といった高度な工程にAIが利用されている。 - サプライチェーンのリスク増大
ドローン供給網などの防衛産業において、奪取された内部コードがAIによって短時間で解析され、更なる脆弱性発見や技術流出につながる危険性が証明された。 - 防御側に求められる対応
AIベンダーによる不正アカウントの早期検知・遮断に依存するだけでなく、組織側も「AIによって高速生成・自動再構築されるマルウェア」を前提とした動的検知体制(アイデンティティ監視やアノマリー検知)を構築することが急務となっています。
Anthropic caught Russia-linked spies using Claude in hacking operations
https://therecord.media/anthropic-russia-hackers-claude
Detecting and countering misuse of AI: September 2026
https://www.anthropic.com/threat-intelligence-report-september-2026
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