
TerminalFix(ターミナルフィックス)は、最近報告された高度なサイバー攻撃キャンペーンです。
本キャンペーンは、侵害された Web サイト上に偽の Cloudflare CAPTCHA(人間認証画面)を表示し、ユーザを欺いて PowerShell コマンドを実行させるソーシャルエンジニアリング手法から始まります。
攻撃の最終目的は、被害者の端末内に独自開発された Python ベースのリバースプロキシ(リバーストンネル)を配置し、セキュリティ機器(Firewallやプロキシ)をう回して組織内ネットワークへの永続的なアクセス経路を確立することにあります。
特徴的な部分をみてみましょう。
- 偽 CAPTCHA を悪用したソーシャルエンジニアリング(ClickFix 手法)
- 概要
ユーザが侵害された Web サイトを訪問すると、「人間の証明」を求める偽の CAPTCHA インターフェースが表示されます。 - 仕組み
「ロボットではないことを証明するため」と称して、提示された手順に従って特定のキー操作(例: Win + R → Ctrl + V → Enter)を誘発させます。
クリップボードにはあらかじめ悪意ある PowerShell コマンドがコピーされており、ユーザ自らの手でターミナル(Windows PowerShell)にコマンドを貼り付けて実行させてしまいます。
- 概要
- PNG 画像を利用したステガノグラフィー(隠蔽技術)
- 概要
初期ペイロードの検出率を極限まで下げるため、画像ファイル内にバイナリデータを潜ませるステガノグラフィー技術が使用されます。 - 仕組み
PowerShell スクリプトは外部から一見正常に見える 3 つの PNG 画像(1.png, 2.png, 3.png)をダウンロードします。
スクリプトはこれらの画像からピクセルデータを抽出し、非表示データをデコードして組み合わすことで、次段階の悪意ある DLL や各種コンポーネントを復元・展開します。
通常のネットワーク監視ツールでは「画像ファイルのダウンロード」としか認識されないため、検知が困難です。
- 概要
- 多段階の侵入・実行プロセス(Multi-Stage Intrusion)
- 概要
検出回避と環境準備のために、処理を複数段階に分散させて実行します。 - 仕組み
- LOLBin(mshta.exe)を介した難読化スクリプトの呼び出し
ユーザが実行した初期 PowerShell コマンドは、直接悪意ある動作を行わずに Windows 標準ユーティリティである mshta.exe(LOLBin: 信頼された正規バイナリ)を呼び出します。
これにより、セキュリティ製品による初期スクリプトの警戒・ブロックを回避します。 - インメモリ実行(反射型ロード等)と DLL Side-Loading
復元された悪意あるコードや DLL は、ディスク上に直接ファイルを残さないインメモリ(メモリ上)処理や、正規プロセスの依存関係を悪用する DLL Side-Loading によってロードされます。
ディスクへの書き込み検知を回避することで EDR の監視を極力すり抜けます。 - Python 実行環境のポータブル展開
ターゲット端末に Python がインストールされていない場合でも機能するよう、軽量なポータブル Python 環境を自動で展開します。
- LOLBin(mshta.exe)を介した難読化スクリプトの呼び出し
- 概要
- 独自開発された Python 製リバーストンネル(client.py)
- 概要
C2(指令サーバ)との通信を確立し、外部からの反転接続を可能にするバックドアコンポーネントです。 - 仕組み
このスクリプトは外部の攻撃者サーバ(例: gitnow[.]dev:443)に対して WebSocket 経由で暗号化コネクション(SSL/TLS)を自発的に確立します。
インバウンド通信(外部からの直接入出)を制限している厳重な企業ネットワークであっても、アウトバウンド(内から外への 443 ポート通信)が許可されていれば接続が確立し、攻撃者はこのトンネルを通じて内側へ SOCKS プロキシ接続を回送できるようになります。
- 概要
TerminalFix キャンペーンは、「ユーザの心理的隙を突く初期侵入」と「既存のセキュリティ検知(AV/EDR/プロキシ)を完全にすり抜ける隠蔽・通信技術」を極めて高い水準で組み合わせた脅威です。
- 脆弱性ではなく人間を標的化: 技術的なゼロデイ脆弱性を使わず、ユーザの自発的なコマンド貼り付け操作を悪用することで、メールフィルターやブラウザの基本保護措置をバイパスします。
- 正規ツールの悪用による高い隠蔽性: mshta.exe などの LOLBin 悪用やステガノグラフィー、メモリ上でのコード実行を組み合わせることで、従来のシグネチャベース検知や挙動監視の目を巧みに逸らします。
- ネットワーク検知の難易度上昇: 画像のダウンロードによるペイロード取得、および標準的な HTTPS/WebSocket(ポート443)を利用したアウトバウンドリバーストンネルの利用により、トラフィック監視のみで検知することは容易ではありません。
組織における対策としては、従業員へのソーシャルエンジニアリング周知(「指示されたコマンドをターミナルに貼り付けない」トレーニング)に加え、PowerShell の実行制限(Constrained Language Mode や Logging の有効化)、mshta.exe など不要な標準ツールの起動制限(AppLocker/WDAC による制御)、不審なアウトバウンド WebSocket 通信や未知の Python プロセスによるプロキシ挙動の監視・エンドポイント保護(EDR)の強化が不可欠となります。
TerminalFix campaign deploys a reverse tunnel through multistage intrusion
https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2026/08/28/terminalfix-campaign-deploys-reverse-tunnel-through-multistage-intrusion/
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